それは、黒いシフォン生地のワンピースだった。
確かに、黒は好きだけど…大人っぽくて。
あたしには、似合わないでしょ。
優季ママ、チョイス失敗してる。
モデルを誰かとはき違えてる。
「…ととととととにかく」
見なかったことにしておこう…。
ちろりと辺りを見渡して、人がいないことを確認し、あたしはその服をクローゼットにかけ直した。
よくよく、見るとカラフルだなぁ…。
ピンクに黒、黄色に、水色。
茶色や、薄紫、白まである。
優季ママ、あたしがあんまり服着ないのに、余らんばかりの服を買ってきてくれていたんだなぁ。…
全てフリフリしてたり、THE女の子な感じなものばっかりだけど。
…恥ずかしいから、って、ろくにクローゼットも開けていなかった。
少し反省。
お金のことも勿論だし、こんなにあたしのことを思って用意してくれていたのに、その善意を踏みにじったから。
「ほんと、ごめんなさい」
あたしはクローゼットに向かって、一礼した。
「………お前、何してんだよ」
まさかこのタイミングで来るとは。
ある意味、罪深き男である。
「少し感謝してて」
「クローゼットにか?」
なんか刺さるっ。
視線も刺さるけど、言葉も一つ一つとげがあって刺さるッ
痛い痛い痛い痛い!
心が痛い!!