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「ねぇ優季クン」
「…ちょいとお出掛け行っていい?」
「お前、夜出掛けるんだろ?今のうちに寝とけ」
君はマジで女心を分かってない。微塵も分かってない。
「浴衣ッ!着たいの」
「…………………」
優季の視線がこちらに泳いだ。
これからがアピールタイムである。
「黒い浴衣に「知ってるか。10代では黒の浴衣は男ウケ悪い」
「……。花がたくさん散りばめられ、「シンプルなヤツの方が好かれやすい」
「…………。髪の毛は大きな髪飾りにっ「頭を盛りすぎるとケバいと判断されるぞ」
「………………」
なんなのコイツ。
つーか、どっからそんな情報を入手してんの。
ちょっとコエーよ。
「…ん?もう浴衣はどーでも良くなったか?」
「はい?諦めるわけないじゃん」
速答すると、彼は大きくため息をついた。
「そんなに着たいのか?」
「…うん」
「……………………」
「……………………………」
「分かった。今から5分後に出発する」
「~~っありがとーーーっ!!」
「ハイハイ」
あたしの感謝の言葉をスルーするとは、…。
なんてもったいない。
けど。
浴衣を買いに行けるので、よしとする。
急いで、クローゼット前まで向かう。
短パンに、Tシャツ…なんていう、ラフな格好をすると、優季に隣歩くな、と冷ややかな視線付きで言われたので、少しおしゃれを試みよう。
優季ママがよく服を買ってきてくれるのだ。
息子しかいないから、娘がいるみたいで嬉しいわ、と言ってくれているが、ほんと申し訳ない。
いつも、申し訳ないので着ないでいるが、今日は少し拝借いたそう。
適当に目に入った白のシフォン生地のモノを取り出す。
「おぉ…………」
思わず感嘆の声。