「志貴先輩、これからどこ寄ります?」
「何で寄ることになってんだよ」
「クレープ屋さんとかいいですよねっ」
「…………………」
無視したら無視で返す。
さすが志貴先輩。私の相手には不足はない。
「お花見とかはどうですか?先輩」
開花のピークは過ぎてしまったけれど、別に全て散ってしまったわけでもない。
「…………………」
「"桜"綺麗ですよ?」
ピクリ、と。
彼は肩を揺らして、反応する。
「お前、"サクラ"好きなのか?」
サクラ。桜。さくら。
貴方が言っているのはどの"サクラ"?
儚げなあの人なのか、あの桃色の可愛らしい花のか。
まぁ彼はどちらも好きだろうけど。
「好きです。綺麗じゃないですか?」
「………そーだな」
何その歯切れ悪い答えは。
そして、なんか空気が重い。
って、あたしのせいか。
こうやって志貴先輩を弄るのは好きだけど、やっぱりこの空気は嫌いだなぁ…。
「………先輩。花見スポットは少し遠いので、駅前のクレープ屋さんで我慢します」
「だから、なんで寄ることになってんだよ」
「いいじゃないですか。可愛い先輩の頼みですよ?」
「お前はウザい後輩だ」
なんつーことを言い張るんですか先輩。
「どう考えても、あたしは可愛いこ、
『グゲゲゲゲ、グゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ』
あぁもう何。タイミング悪い。
あたしはポケットに入ったスマホを取りだし、メールを確認した。
隣からの視線が痛いのは気のせいだろうか。
うん、気のせいに違いない。