あえてここは知らないフリ。
だって知っていたら不自然だから。
「…そうですか興味がないんですか。同じ趣味があるのかもしれないって期待してしまったじゃないですか。さっきのトキメキ返してください」
「…知るか」
「いやいや知ってください」
そんな私のつっこみを無視して、彼は踵を返して、また歩き出す。
無視するなんて酷いなー。
なんて少しケチつける。
そんなことを口に出したらレーザー光線で凍らされそうだから言わないけど。
私は先輩に置いてかれまいと走り出す。
ちりんちりんちりんちりん。
ちりんちりん。
鈴が鳴る。
綺麗な澄んだ不思議な音。
彼が大好きで、たまらなく大好きで。
彼が忘れようと。必死に忘れようとしている、
─────美しくて悲しい残酷な音。