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「……………というのが、あたしのプチエピソードでした」
「プチじゃねぇだろ」
「うそーん」
プチだって。お父さんが死んで、ただお母さんに嫌われて、妹とお母さんに会えなくなっただけ。
あの時は、お父さんが死んだのはあたしのせいだと漠然と思ってたけど、今考えればあたしのせいではない。
雪やトラックが通ったとか不運が重なった事故だと思っている。
……と優季に気付かされたというのが、正しいけど。
「はるるーん、分かってくれた?」
「分かるも何もベビー過ぎて、分かんないってー」
「理解能力なさすぎ」
「その話と俺の話の共通点がないじゃないのさー」
「……………」
はぁ、と気付かれないように小さく溜め息を溢す。
もうさっさと理解しろ。あたしだって、この話、あんま長々と語りたくないの。
だって、涙が出てくるから。
今だって、少しばかり目頭が熱い。
「…あたしね、はるるんの気持ちが分かるんだよね」
ほんと、手に取るように。
「はるるんはさ、きっとお母さんもお父さんも見てくれていない、って思ってんでしょ?」
「…………」
「だから、髪色を派手にした。だから、勉強を頑張った。だから、運動を頑張った」
諦めが悪かった。
優季の家に居候させてもらってる間もあたしは色々と頑張っていた。
けど。
「……変化はなかった」
何も起こらなかった。
ただ変わったのは、自分の知識の量だけ。
「あぁほんとに自分は誰も見てくれていなかったんだ」
気づいた。無駄だと。
「…さて、ここで問題です」
気付けはるるん。
「…ねぇはるるんはさ、お母さん達に何かしましたか?」
分かれはるるん。
あたしはお父さんを殺したので、捨てられた。
「……………ねぇ答えてよ」
はるるんは、何かした?
「…………多分、親ってさ。よっぽどのことがなきゃ子供に興味を無くさないと思うよ」
「…………」
はるるんは目を伏せ、そっぽを向いた。
うむ。あたしはそれを理解した、という意味と捉えるよ。
「…さて、はるるんは分かったことだし」
時間は7時45分くらいだし。
「あたしはこれで帰る」
ミッションコンプリート。
さすが美沙ちゃん。やれば出来る子だ。