―――勉強や運動を頑張った。
────そしたら、お母さんはあたしを見てくれる思った。
―――お母さんと呼び続けた。
─────いつか、優しくあたしの名前を呼んでくれると思った。
―――優等生を演じた。
─────お母さんには嫌われたくないと思っていた。
―――全てを難なくこなした。
─────お母さんがあたしを見てくれると思った。
―――少し迷惑をしない程度、やんちゃをしようとした。
─────少しはあたしを見てくれるでしょ?
小学校の自分がしてきたこと。
全部、無駄だった。
そもそも、好かれようと思ったところから、可笑しかったんだ。
どう足掻いても、どう願っても。
「あたしがお母さんにしてしまったことは取り返しがつかない」
自業自得。
そう割りきっていた筈なのに。
諦めたくない自分がいて。
それがあたしの後ろ髪を引っ張っていた。
けど、それも高校まで。
分かりきってた事だった。
予測はしている事だった。
その日は生憎の雪で、世界を真っ白に染めていた。
その中を泣きながら必死に走って、転けて、嘆いて、叫んで。
「はるるんには、あんな思いして欲しくないんだよ」
バカじゃん、はるるん。
ただのすれ違いじゃん。
なのに、それが少しずつ少しずつ大きな溝になっていく。
そしたら、大きな距離が出来上がり。
あたしの二の舞だ。
だから、任せろはるるん。
あたしはやれば、出来る女だよ。
やってやろうじゃんよ。
そう決意を決めた時に、目の前の扉を勢いよく開けた。