「おっひさー、はーるるん」


語尾にハートが付きそうな美沙ちゃんの言葉。


彼女はさっきまでいた女の子が走っていった方を一回見てから、視線を俺に戻す。


そして、


カチャリ、と扉を閉めた。


「どーしたの?美沙ちゃん。俺に抱かれたくなったのー?」


「んー?そー見える?」


彼女の目を見ると、剥き出された感情で溢れていた。


“怒”だ。


1歩、1歩、彼女は俺に歩み寄る。


俺は何もすることなく、彼女を見据える。


そういえば、おととい言ってたっけ?




───『ねぇはるるん。あたし、はるるんを助けたい』




この言葉の行動がコレ、ね。


まさか現場に来るとは。


志貴でもんなことしなかったよ。


もうこの子の神経はどうなっているのやら。


常識ではあり得ない。


「はるるん、」


彼女は怒の感情を剥き出しにしながら、目の前に立ち止まる。


その距離1メートル弱。



彼女は白く綺麗な2本の腕を伸ばし、両頬を押さえる。


「目をそらすな」


敬語がない、年上だと思って接してないよこの子。


マジなんなの。



「朝霧双葉。その子、妹?」



「そーだよーん」


「大ッ嫌いでしょ」


「もちろん」


「ねぇ、何で嫌いなの?」


「体弱いくせに学校行ったりして。…ずっとベットに横たわってりゃいいものを」


そういうと彼女は悲しげに顔を歪ませた。


まるで、自分のことのように悲しそうに瞳に影を作った。