「こっち来ないで!」 「あの子完全に自分を見失ってる。」 「早く助けなきゃ」 私達が様子を確かめに来た時にはもうその子はいつ飛び降りてもおかしくない状態だった。そんな中でも絆のチームは冷静な判断力で屋上にいた警察と記者を屋上から立ち去るように命令した。警察はすぐには立ち去ろうとしなかったが美紅たちの真っすぐな目を見ているうちに任せる事にしたようだ。 「どうして飛び降りようとしてるの?」 美紅がゆっくりと優しく話しかけた。 「あなたに何が分かるのよ!!」 女の子は鋭い口調で今にも泣きそうな声で答えた。 「あなたは知らないんだね。絆のチームがどんなグループなのか。」 「えっ?」 女の子は戸惑った。その姿を見た私達は女の子がどういう子なのかだいたい予想がついた。だって普通なら、戸惑ったりしないから。まるで聞いちゃいけない事を聞いてしまった、と人の気持ちがものすごく分かる。そんな子はとても優しくて言いたい事を我慢している子が多い事を美紅たちは知っていた。 「あなたは私たちと一緒なんだよ。人の相談は聞いてあげれるのに自分の悩んでいる事は言い出せない。」 美紅はどこか切ない表情をしていた。隣で聞いてた龍もそっと話しかけた。 「俺たちはみんな同じ思いをしてきた。どんなに辛くても誰にも言えずに。」 美紅と龍の少し後ろにいた3人も頷いていた。 「でもみんなと出会ってから変わったんだ。」美紅はそう言いながら真っすぐ女の子を見つめた。 「だから私たちはあなたにも生きて欲しい。世の中には逆らえない病気があって死んじゃう人たちは沢山いる。神様が私たちに命を授けてくれたなら、精一杯もがいてみてもいいんじゃないかな。」 女の子は涙を流しながら聞いたいた。 「それでも辛い時は私たちが話聞くから。だから生きようよ、私たちと一緒に。」 美紅が心からの思いを伝えた。そのおかげで女の子も思いとどまった。 だがその時、強風の風が吹き荒れた。美紅はとっさに女の子の手をとったが足を踏み外した女の子の体は美紅が手を離せばそのまま落下してしまう状態だった。病院の下には救助隊が待機していたが風の影響を受ければどこに落ちるか分からない。頭のいい美紅たちはとっさに計算してそう判断した。龍たちが引っ張り上げようとするが風が強すぎて、足を踏ん張らないと立っていられなかった。 美紅たちは風が一瞬落ち着いたのを見逃さなかった。たったの一瞬で引っ張り上げたのだ。女の子はその場で座り込み泣きながらお礼を言っていた。