「2人はもう撮影してる 」
とにっしー
「え?千晃たちは何で…?」
と聞くと 千晃は苦笑いした 。
「日高と秀太はさ、アクロバットしなくていいけど ほら 、あたしたちはさ…」
…な、なんか
凄いテンション低いぃー
こんなテンションでやったら
絶対誰かケガする!
と思いつつも、さっそく練習
「 ……… 」
身長的に、あたしはにっしーとペア
ゆかりんとリーダーはすでに
お姫様抱っこ状態まで進んでいる
にっしーとは普通に話すけど
直也くんとかと比べたら少ないかも…
手足を動かして身体をほぐしているにっしー。
いつ練習し始めるのか分からず
にっしーの背中を見つめる 。
話しかけていいのかわかんないな 。
そりゃ練習しないとなんだから
話しかける権利はあるけど
お取り込み中だったら悪いし…
っていうか にっしーって
みんなの前だと いじられキャラで
笑顔が可愛いボーカル だったから
こんな風に 話しかけることに
戸惑うなんて 思ってもみなかったな 。
でも … なんか躊躇ってしまう 。
なんだろ?
今目の前にいる にっしーは
なんかこう …ステージのときとは
真逆で クール ?
って … あれ?
あたしってこんな性格だったっけ?
……まぁ、人見知りだからね
するとドンッと音がした
…う、誰か落ちた?
音がした方に振り向くと
直也くんとゆかりんが
すでに回す段階まで上達していた 。
「え!すごい!」
思わず 、あたしはつい拍手する
「案外いけるよ!」
とゆかりんがVサインを送る隣で
「ただ、ゆかりんの身長が大きくて床にぶつかるけどね」
と直也くんがからかう
「ひどーい!あたしだってこんなに床に当たるとは思わなかったよ!もう少しお腹曲げないとね…」
とゆかりん
その 理解の速さというか
すぐに出来てしまう かっこよさに
メンバーながら 惚れ惚れしてしまう 。
そのせいか 目が離せないで
夢中になって 2人を見ていると
「え 、宇野ちゃん 練習しないの?」
と直也くんが驚いていて 。
「あ、そーだった!じゃあ戻るね!」
すっかり忘れてた…
急いでにっしーの方へ戻る
すると まだ手足をほぐしていて一安心
…って、いつまでやってるんだよ!
そう心の中で突っ込んでいると
にっしーが振り向いた
「じゃあ そろそろ始める?」
「うん、がんばろ!」
とは言ったものの…
「宇野ちゃん、そっちじゃなくて
こっちに足回さないと落ちる!」
「え?どっち?どっち?」
と危険状態…
ぶっちゃけ言うとさ、あたし運動音痴で…
だからアクロバットなんか無理だよ!
しかも、こんな
命に関わりそうなアクロバット…
怖さで鳥肌がたつ
ガクガクと 足が震えていたら
隣から 優しい声が聞こえてきて 。
「大丈夫、俺宇野ちゃんの事絶対受け止めるから 。だから安心して身体預けて 」
そう言って にぃっと人懐っこく笑う
にっしーの笑顔 。
ーーーー あれ
もしかして にっしー
あたしが怖がってるの 気付いて …?
何だろう 。
今胸の奥がキュッとなった…
今のは一体なに?
「…宇野ちゃん?」
とにっしーの声であたしは現実に引き戻された
「え?あ …えと ありがとう 」
自分らしくない
モゾモゾした言い方 。
すると彼は
ファンの子の心を掴んで離さない
あの きらきらと輝く
まぶしい笑顔で笑った 。
「どーいたしまして…なのかな?」
もしかしたら …
私は この時からすでに
恋に落ちていたのかもしれない
でも、あたしはまだ気づかなかったんだ 。
「 ………っ 」
心臓の鳴り方が 速いのは気のせいで 。
ただ びっくりしただけ 。
だって … あたしの知ってる
ステージ上のにっしーとは
違かったから …
意外に男らしい一面を見ただけ
それだけだ 。