天才同士の喧嘩の間に入りたくないので、俺は外に出ることにした。
ゼロさんとロメさんの会話には興味があったが、うん、二人っきりで頑張ってほしい。
そして今細い路地に入ったところなのだが。
「427」
背後から聞きなれた声がして、反射的に俺は膝をついて頭を垂れた。
「顔を上げろ…首になったといっただろう」
「アイス…さん…」
「そうだ、ジュエル=ホセ」
懐かしい。
俺の第二の故郷とも言える地獄の元看守。
俺の第二の親とも言えるアイスさんにこのタイミングで会えた!
クラウンやゼロさん含むあっちの人達は俺が絶対アイスさんに会いたくなくて、会うとトラウマが呼び覚まされておかしくなると思っているらしいが。
全然問題ない。
精々足に力が入らなくなって勝手に涙が出てきて全身が震えるくらいだ。
アイスさんは何でもないことを知っているので、遠慮なく残虐な笑みを浮かべた。
「久しぶりだな」
アイスさんの私服姿が超かっこいい件。
俺の周りにはイケメンが多いのだ。
「はい…お久しぶりです…」
「元気にしてたか?」
優しい!
何故だ、いつも罵詈雑言の限りを尽くして俺を追い詰めるアイスさんがあろうことか優しい!
「あ、はい…」
なんだこのご褒美感!
優しくない人に優しくされるだけでなぜこんなに幸せを感じるのだろうか。
生き別れた両親に会えたレベルで嬉しい。
「最近子供ができたんだろう、おめでとう」
感激だ。
アイスさんの口からおめでとうと…!
この一瞬が凄いご褒美感…
我ながらなんて安い精神だ。
「なあ、ジュエル=ホセ?」
アイスさんが微笑んで近づいてくる。
「また、会えるか?」
いい忘れていたけれど、ウィングに教えた男とキスした回数。
相手はこの人だ。