「ゼロさん」
「あ、L君ですか。おかえりなさい」
相変わらずの隈、肌は褐色なのに不健康。
「ただいま帰りました」
「子供ができたと聞いたんですが、本当ですか?」
「はい、まだ男女は分からないんですが」
「良かったじゃないですか」
ロボットだけに全く外見が変わっていない。
20代後半。
6歳の時始めてゼロさんに会ってから、ゼロさんの時間はまだ10年もたっていないのだ。
「本当に…君も大きくなったものですね。はじめは子供で…あんなに小さかったのに」
ゼロさんは疲れきったような溜め息を漏らしながら微笑んだ。
皆俺が疲れてるとか頑張りすぎとかよく言うのだが、疲れているというのはゼロさんのことだと思う。
なんでゼロさんだけこんなに報われないのだろうか。
俺は今幸せなのに、ずっと苦労しているゼロさんだけこんなのは絶対におかしい。
「ゼロさん」
「はい?」
「ロメさんとはいつご結婚なさるんですか」
「しませんよ!?」
「でも、お似合いです…」
「シュンとしないでください!君は犬か何かですか!?何故一足飛んで結婚なんです!」
「あ、じゃあお付き合いはされると…!」
「顔を輝かせないでください!しません!」
彼女は所長の娘ですよ、とゼロさんは優しく言った。
「どこの誰がなりそこないのアンドロイドと付き合いますか。私はアクセサリーにもなれません」
ほら、ゼロさんだけ報われない。
何故だ?
俺とゼロさんでは性格と財産と顔と地位と立場と人種くらいしか違わないのに…
ゼロさん、苦労性だからかなぁ…
「ロメさんは大好きって言ってるじゃないですか。半分ロボットみたいなものだし」
せっかくあの花束をクラウンから奪ってロメさんに渡したのに。
「私のことを彼女は弄ぶのが好きなんです」
違います。
ゼロさんが弄んでる。
純粋な乙女心を。
ロメさん焦らされまくりなんです。
手を繋いだらキスくらいしてやれ。
隈あってもかっこいい。
「ゼロさん」
「何でしょう?」
「俺とキスの練習しませんか」
「絶対しませんよ!?」
何故。
ロメさんのハートを奪わなきゃ。
キス練くらいやれ。
「ゼロさん!真面目にやらなきゃ駄目です!ロメさんのハートを奪わなきゃ!」
「君がおかしくなったんですよね!?大事なところがずれてますよ!?」
だいたい、とゼロさんは溜め息混じりに微笑んで俺を見つめた。
「私は君がいてくれればそれで満足です」
「…ゼロさん…」
どうしてそれを俺に言うの!?
それをロメさんに言え!
ロメさんイチコロだ!
かっこいいのに!
何故ゼロさんのイケメンぶりが全く描写されない!?
ゼロさんかっこいいんだからな!?
初登場でシルンが酷評してたけどかっこいいんだからな!?
イケメンなんだぞ本当に!
信じろ!
ゼロさんかっこいいのに!
すっごくかっこいいのに!
「やっぱりキス奪っちゃえ」
「だからしませんよ!?」