帰ってきたホセは清々しい顔をして返り血を拭っていた。

「クラウン、調子はどうだ?吐き気なんかはないか?」

私がホセの返り血を注視していると、これか、とホセがにっこりした。

「ウィングのだ」

清々しい顔をしないで。

私が目に涙を浮かべると、ホセは眉を八の字にして私の頭を撫でる。

「ウィングは大丈夫だ。な?だから泣くな」

優しい奴だ、とホセは言うけど。

いやあの悲鳴を聞いて可哀想に思わないのは君ら兄妹だけだと思う。

だって凄かったもん。

地獄絵図の悲鳴だもん。

怖いよ。

ホセにいじめられたら死んじゃうよ。

「するかよ、馬鹿。お前にやりたくないから天界まで行くんだ」

ウィングが不憫すぎる。


私がホセの機嫌を窺うように見上げると、ホセはクスッと笑って額にキスした。

「なんだ、機嫌でもとろうとしてるのか?」

私がうつむくと、ホセは愉快そうに笑って可愛いな、と一言。

確かに病的だった肌は少し健康的になったけど。

可愛いっていうな!

「あー怒ってる怒ってる」

ホセは私をからかうことに余念がない。

三歳児扱いでいいこいいこされても嬉しくなんかない!

「よしよし」

キャンディーなんかで釣られない…

もん…

「ほらほら美味しいぞー♪」

あーん、と食べる真似をするホセに、私はむすっとした。

私は赤ちゃんじゃない!

「じゃあこれは俺が貰ってもいいんだな?」

…いや!

私は苦渋の決断の上、ホセからキャンディーを奪い取った。

「…可愛いな、本当に」

ホセはニコニコして私を見ていた。