カツン、とブーツの底が大理石の床を叩く。

その音で一気に浴びせられる視線に時たま軽く頭を下げて会釈しつつ、ホセはゆっくりと歩を進める。

やけに静かな右手側とは裏腹に、左手側には礼儀正しい拍手がなり響いていた。

いつもの数倍の漆黒に包まれた衣装は恐ろしいまでに美しい容姿を際立たせる。

右手に絡み付く誓いの鎖が歩く度に揺れ、神秘的な輝きを放っていた。

額に巻かれ金の刺繍が施されたリボンがキラキラと輝いていて、その美しさには神族ですら息を呑んだ。

祝福の鉱石の安置された祭壇の手前で立ち止まり、一礼して振り返る。

「皆様、本日はようこそおいでくださいました」

浴びせようとしていた罵声なんて吹き飛ぶほど美しいその声に、悪魔かどうかなんて関係無く聞き惚れる。

揺らめく光の中に浮かぶ微かな微笑は、危険な瞳すら美徳だった。

「この場にこうしていられる、こんな幸せが他にあるでしょうか…」

それは独り言のようだったが、その響きは喜びに満ちている。

微かに開いた扉に今度は全員が注視し、僅かにうつむいたクラウンが現れたのを認めた。