よく晴れた日の教会は窓のステンドグラスに透き通る光が美しい。

時たま強く光るそれはキラキラと瞬き降りてくる小さな妖精の祝福のようだ。

普段は淀んだその天井の屋根は透き通った水のようで、神の教会という滑稽な人間らしさを嘲笑うように透明で、憎いほどに光を通す。

そんな様子で、自然はどうやら、彼等を祝福したいらしかった。


しかしそこにいる人間に目を凝らし、祝福の場に相応しいと言える人間がいるだろうか。

いるのなら気がふれているか、よほどのへそ曲がりか。

とにかく真っ二つに割れた金と黒はいっそ美しいまでに険悪で、談笑を交わすには酷く殺伐としていた。


互いに睨み合うのは全身に黒の装束を纏った悪魔と金の衣装を纏った神。

悪魔にとっては神は敵で、自分達の英雄を丸め込まれたような、そんな感情を抱えていた。

たしかにジュエル=ホセは魔界の英雄と言えるだろうし、彼は優しい。

しかし奪われたようだと、そう思っているのは彼等を直接には知らない。

否、彼と彼女の恋を知らないのだった。

そして神の言い分はしかし奇妙なもので。

どうやら吸血鬼という彼の種族が気に入らないとそういうことらしい。

それは彼自身酷く気に病んで、それを気にするなと何度も自分は言っていたがしかしなるほど。

彼はこういう頭の固い者で世界は回っているとこう思っていたようだ。

人柄より才能を重んじるべきと主張する天才もどうかとは思うが、才能より身分を重んじる神達はどこまでも浅はかだ。

彼を壊したのはこういう世界だったのだろう。


中心に揺らめく水晶は、規則的に神秘の光を反射する。

澄みきった水は瞬時に光によって汚される。


そんな状態だったものだから、滑るように扉から出てきた彼に即座に気がついた者はどれだけいただろうか。

すくなくとも隣に座っていたゼロは気がついたようで、ようやく止まった涙を今にも溢しそうだった。

「大きくなったものだな」

Nはそう呟いて、凛としてただ前を見据えるホセに気がつかれないように、そっと微笑みかけた。