「おいクラウン、何呑気に寝てるんだよ!」
翌日私はウィングに叩き起こされた。
「アクアが、アクアがいねえんだよ!」
それは吉報じゃないだろうか。
寝起きの私はぼーぅとした頭でそう思った。
「ちげーよにっぶいなぁこの馬鹿!これが置いてあったんだよこーれーが!」
そういってウィングは私の鼻先にヒラヒラ紙をつきつけた。
【拝啓
この手紙を読んでいるのは誰だろう。ウィングの子供たちかもしれないが、恐らくウィングが現れるまで此処にずっと置かれているだろう…
ウィング、悪いがアクアは預かる。ああ待てよ破るな怒るな。必ず返しに行くから待っていてくれ。
さて此処からはクラウンにも伝えておいて欲しいんだが、ウィング。俺は永い間逃げてきたことに決着をつける。
1つはアクアのことだな。もう1つは自分の問題だが。
宛はあるが、勝機は無い。正直言って上手くいかないんじゃないかと思う。でもこれ以上逃げている訳にもいかないから、俺は闘う事にした。
もう一度言う。勝機は無い。こんなに逃げ続けてきたツケが一気に襲いかかって来るだろう。
クラウン、お前に生きて会えるかどうか分からない。正気かどうかはもっと分からない。だがもう逃げない、絶対に。
クラウン、ウィング。
俺は決して、この闘いに勝つか負けるかするまでお前らには会わないと決めた。会いに来るな、探しにも来るな。
いつか会える日がもし来たら、きっと俺から会いに行くから。
待たなくていい。
待たなくていいから。
忘れていい。
悪い夢だったそう思えばいい。
どうか、幸せに生きてくれ、クラウン。
草々】
その残酷な手紙は、綺麗な飾り文字で刻まれた純金のサインで締め括られていた。