「ついた」
下ろされた(最終的にお姫様だっこになってた)私はそのコテージを見て、息を飲んだ。
ぴぴ、と不思議そうに鳴く小鳥と。
戯れる“ペガサス”。
大空を翔るその美しさに私は釘付けだった。
「此処は、伝説の生地(セイチ)とも呼ばれてる…探せばユニコーンやドラゴンもいると思うぞ」
ここから迷い出て色んなところに散らばっていくんだ、とホセは言った。
ねえホセ、幸せだね。
私は笑って、一頭のペガサスを呼んだ。
人懐っこくて、私をくすぐる。
私はホセにペガサスを近づけた。
動物、好きなんじゃないの?
ホセは一瞬、躊躇した。
ほんの一瞬だったけど、それはいつか誰も傷つけないように誓ったあの残酷な約束を思い起こさせる躊躇。
私は、ほんのわずかに笑顔を浮かべることを躊躇する、ホセの葛藤を、見てとった。
分かるの、ホセ。
ホセはやっぱり、自分を責める。
「可愛いな、ペガを思い出す…なあ、クラウン?」
ホセは本当に、馬鹿なんだね。
馬鹿で、完全で、完璧で、自罰的な人。
「クラウン?」
ホセは私の瞳に、瞳のクリスタルに気がついて慌てて目をそらした。
もうやめようよ、ホセ。
アクアを理由に、自分を責めないで。
アクアはそんなこと、一度も望んでない。
知ってるくせに、知らない振りをするから。
それを大義名分に、自分をいじめる。
これが正義なの?
だとしたらやっぱり、歪んでる。
ホセの正義は…
「クラウン触ってみろよ。ほら、暖かい」
モフッと、たてがみに顔を埋めて見せて、ホセは悲しそうに笑った。
私はかけよってホセをそっと抱きしめて、大好きだよって、そういった。
「ありがとう、クラウン」
ホセの笑顔は今でも覚えてる。
あのときのこんな笑顔。
こんな幸せそうな笑顔…
始めに言っておくと、この時から数百日、私はこの笑顔を見られなくなる。
笑顔とほとんど同時に、ホセの姿も、だけど。