果たして30分後、ホセはハイキング向きの軽装で現れた。
またもや壁を壊して。
といっても下はラフな九分丈に上は春らしいTシャツにパーカーをバサリと羽織っている。
靴もブーツではなくスニーカーで、両手の手袋も色が少し茶色に変わっているし長さも手首くらいまでしかない。
「どうだ?お洒落してみた」
いつもが礼服だとお洒落な服装がラフになるという相対性(?)を見つけた私はかっこいいよ、と声をかける。
「本当か?嘘だろう、顔が笑っているぞ。変なら変だと言え」
気を使うなとホセは言うけど、何でも似合うのだから気を使うも何もない。
だってにあうもんホセは元々美形だし、と私が言うと、ホセは何故か顔を赤らめる。
「…ありがとう」
だがいいか忘れるな、とホセは私に言う。
「あまり可愛くなるな、隣が歩きづらいだろうが…」
悩ましげに口元を隠しながら、ホセは少しだけ首をかしげて、着替えろと。
それだけいってまた壁を蹴り破って出ていってしまった。
…何か嫌なことがあったのかな?