…一体何度目なんだろう…この感じ…
うん確かにね、確かに私が誘ったよ?
私が一緒にねよって言ったよ?
でもね?
ホセは意外にも起きて数十秒はパニクっちゃうの!
ホントにドカバキハングルヴァージョンじゃないかい!
ならないようにもちろん私は不自由な両手をぐにゃぐにゃ動かしつつ、ホセ側に移動魔法でクッションを敷き詰めていく。
「う…」
あ、起きそう。
「…クラウン?」
数秒固まったホセは冷静にも何度か瞬きしてフッと息を吐いた。
「怪我はないか?」
違う、怪我はないけど…
「昨晩だろう?思い出した…悪かったな…いや、ありがとうな」
アクアの亡霊って存外恐い、とホセは自嘲の笑みを漏らす。
「あれからはよく眠れた」
よかった、と私はそういって、にっこりする。
「仕事、行きたくねぇなぁ…」
今日はずる休みして遊びにいこうか、とホセが言う。
いや私はいいけど…
「じゃ、行くか」
言うが早いかホセは立ち上がり指輪に向かって喋り出す。
「すみません、ゴホッ、昨日疲れて髪を拭かずに寝たらはぁはぁ…ちょっと微熱があるんですが…」
「何してるんだ君は!君のために労働規準法を作ったんだぞ!君が活用しなくてどうする!」
何やら相手は怒っているようだった。
「ですから今日は一日遊園地にでもいってきます」
「やめなさい!」
「たまには休憩を頂けたらと」
「有給なら3年長期休暇がとれるレベルだ!ただし遊園地じゃなくもっと静かなところで休みなさ」
「そうですかありがとうございました」
「まちなさ」
躊躇なくホセは指輪についていた連絡機器を壊す。
ちょ、大丈夫なの!?
壊すことなくない!?
「デート中に鳴ったら嫌だろ?中身は全部覚えてるから問題ない」
…そっか、ホセ天才なんだった。
「何を言う、千とちょっとしかないぞ」
いいよ、分かったよ。
「で、どこに行きたい?どこでも連れていってやる」
うーん…その~…
「なんだ?」
静かなところに行かない?
森とか、山とか。
緑がいっぱいのところ。
「…俺に気を遣うな。微熱は虚言だ」
そのくらい知ってる。
咳と息遣いはすっごくリアルだったけど。
二人っきりで過ごしたいの、と言うとホセはしばらく思案してああ、と微笑む。
「お前の頼みならな」
そうして私に耳を寄せ、ホセは囁いた。
「二人で抜け出すか。最高のとこ、連れてってやるよ」
その声にゾクッとして固まると、なんとホセが私の部屋の壁を蹴り壊した。
「じゃあ、30分後に迎えに来る」
勝手に再生していく壁を見ながら私は思った。
…なんか、今日のホセは破壊的…だよね?