喉乾いた。
私は夜中近くに起き出す。
めちゃくちゃ喉乾いた。
お水お水、と上半身を起こしたところで私は不思議な呼吸音を聞いた。
荒い、苦しげな。
私は気がつかれないように伸びをして、きがつけばそれは足元から聞こえてくる。
正確にはベッドのそば。
「!あ、クラウン…!」
バッと飛び起きて、それは私に覆い被さった。
「やめて、頼むから…頼む、クラウンは、クラウンは連れていかないで…」
その声は紛れもなくホセだった。
切なげな、苦しげな呼吸も。
小刻みに揺れるホセは私を庇うようにして倒れたままで、さらに強く私を抱き締めた。
「お願いだ、お願いだ…アクア、アクア…つ、連れていくなら…俺を、なぁ、アクア、アクア許してくれよ…許して、許して…!」
そこで我に返ったようにホセは私から離れた。
「あ…悪い、起こしたか…?」
ごめん、取り乱した。
そういっておやすみ、とホセは私を寝かしつけようとする。
子供じゃないんだから、ホセは私を甘やかしすぎ。
それに、起きたのは喉が乾いたからだよ?
「…!あ、あそうか、悪い…あの…水、でいいか、取ってくる」
ありがとう、と言うが早いかホセは私に水差しの水を差し出した。
…速い。
私はもう一度お礼をいって、こくん、とその水を飲んだ。
「…」
ホセは苦しげに私を見て、おやすみ、と微笑む。
ホセ、一緒に寝ない?
そういった私にホセは驚いたように首を振った。
「いや、俺は…」
私がいた方が安心するんでしょ。
違う?
「…いや、いい。迷惑に」
ならない。
私がきっぱりそう言うと、ホセは少し迷って悪い、とベッドに潜り込んできた。
「アクアが、毎晩…俺を責める…苦しいんだ…いつも、お前をつれていこうとして…不安で不安で、仕方がなかった」
どっちが夢かわからなくて、とホセは自嘲気味に笑う。
「確認しに来なきゃ、不安で死にそうになる」
ホセの顔が近い。
自分でいっておいて何なんだけど、すっごくドキドキする。
なんか、ホントに、どきまきというか…
「礼だ…」
そういってホセは少し私の頭を持ち上げて、その下に自分の腕を入れる。
痺れちゃうんじゃ、と私は遠慮したけど、ホセは何を言う、と微笑む。
「お前程度の小顔を乗せてたって問題ない」
暗闇に浮かぶその笑顔があまりに綺麗すぎて、私はぼーっとした。
「おやすみ、クラウン」
もう片方の手も私の体を引き寄せ、私はホセの抱き枕状態。
ちょっとだけ抵抗してみたけれど、離してくれなさそうだったので私はそのまま眠りに落ちてしまった。