そしてホセに私の背中を洗ってもらい、私たちは湯船に浸かった。
「…」
緑の水晶の湯船にゆったりと体を預け、ホセは自分で首の辺りを揉み始める。
何してるんだろ?
「こうすると疲れがとれる。首が良く凝るんだ」
出たらお前もやってほしいか、と冗談混じりにホセは言ったけど。
私がノーと言うわけないでしょ!
と、言うわけで。
「お前、なぜこんなに凝ってる。肩がガチガチだぞ」
ググググっと両方の指を押し込まれ、私は軽く悲鳴を上げた。
「でも気持ちがいいだろう。ある程度乱暴にやった方が」
それはそうだけど。
ホセのマッサージを表現するなら、ゴットハンドだ。
神の手。
超気持ちいい。
「足出せ。ツボ押してやる」
私がグッと足を伸ばすと、ホセが両手で足の裏をゆっくりゆっくり押していく。
「なあクラウン?」
ん、と私が唸ると、ホセは自嘲気味に私を見上げて言った。
「こんなことをしてると、昔を思い出す」
私は警戒して足を引っ込めかけたけど、ホセは動かすな、とガッチリ固定する。
「覚えてるか…?隷従の証の接吻」
思い出したくない。
私がそっぽを向くと、ホセはそうだな、と同意した。
「俺もあの頃には戻りたくない…最も、お前がなれと言うなら奴隷にでも死刑囚にでもなるが…な」
お前が俺を愛してくれるなら。
甘い言葉を素で吐くホセに私は顔を赤らめた。
「俺はお前の傀儡だったからな。お前の機嫌ばかり窺ってた」
最悪、私がそう呟くとホセはそうかもな、と微かに笑う。
「俺はそんなことはなかった…お前の好意が心地よかったからな。それを失いたくなかったんだよ…クラウン」
交代、とホセはもう片方の足を取り上げる。
「あのころからお前は俺に優しかった」
それは、ホセが気がついてないだけだよ。
ゼロもロメも、あの怪しげなNって奴も、魔王も、みんなしてホセを守ろうとしてたよ?
「…まあ…そうかもな」
曖昧に言って、ホセはそっと私の足を離した。
「おやすみ、クラウン。愛してる」
おやすみ、ホセ。
私はそういって、ベッドに横たわる。
体がほんわか温かくて、私は眠りに着いた。