さっきのホセは尋常じゃなく怖かったけど。

私は何事もなくシャワーを浴びて湯船に浸かった。

今日のお湯は濁り湯。

あー、気持ちいい…

「入るぞ」

どうぞ~♪

「…お前、俺から二度と離れるな」

ホセは呆れ返ったような溜め息で養殖が無理すんなと言っていた。

だから何?

養殖って。

そう聞こうとして私はホセの方を見て。


「…?」

か、格好いいいいいいい!!

タオルを腰に巻いただけの格好なのにイケメンだ!

胸部の呪いの赤薔薇が一輪、心臓の上で咲いて。

這うような茨と棘さえ美しく。

首をかしげたその姿が恐ろしいまでに綺麗だった。

湯気がその姿をおぼろげにして、本当に…

「何見てる。顔、真っ赤だ」

パチン、と指を鳴らして微笑んで。

クルッと後ろを向いたホセを、魅惑的にお湯が濡らしてく。

またこちらを向いて石鹸台に腰掛け勝手にシャンプーを始めたホセは手際よく泡を増やしつつ、私に話しかける。

「惚れた?」

本当にぶっ殺してやりたい…

「なぁクラウン」

ホセはいったん泡を流してリンスを手に取りながら言った。

「一回やってみたかったことがあるんだが…協力してくれないか?」

私は快く頷き。

それをとても後悔した。


「上、あと少しだけ上だ…」

私は溜め息を着きながら両手を上にずらす。

「そこ、あいたっ、おい強すぎる…」

怒りを込めて強くスポンジを押し付けるとホセの背中がビクッと揺れた。

…そう。

今私はホセの背中を洗っている。

ホセによれば、一回やってみたかったと。

知るか。

ウィングとやれ。

「お前な。だから変態って言って可愛く拗ねてくれてもよかったんだぞ」

どんな分かりにくい…

「でも、一回やりたかったことは確かだ」

何げに嬉しそうに言ったホセは機嫌よく笑った。

えっ!?

「どうした?」

笑っ…ホセが…笑っ…た…!

私はキャーと叫んでホセに抱きついた。

「おい待て、だからなぜお前は!」

あわあわのホセの背中に頬擦りすると、ホセはもがきながら私から逃れようとする。

「ストップ、ストップだ。おい、馬鹿クラウン!」

ホセはグルッとこっちを向いて腕一本分私を突き放す。

「誰にでもこんなことをしているのか…?」

するか。

さすがにそのくらいの分別はあるし。

「…お前のそのボーダーラインが分からない」

ホセならオールオーケー。

以上。

「…ふざけるな。俺はなんだ、お前の旧知の親友か?異性にすらならないのか?」

え?

ホセはいいでしょ。

彼氏だし。

それに。

婚約者でしょう?

とは、私は言わないけど。