で。

ウィングがどうなったかなんだけれども。

結構酷いことになったらしいです。

イメージとしては、ライオンが鹿をパクパクしてる感じ。

もちろん、ウィングは食べられてはないけど、瀕死にまでは追い込まれたらしい。

すぐに回復させてやったから命に別状はない、とホセは言っていた。

…ほんとかなぁ。

結構嘘つくからなぁ…今は見事に誠実の塊なんだけども、ウィングの事に関しては微妙だから…

まあ、いいや。

ホセを信じよう。

ウィングはきっとどこかで生きてるよね。

「…お前、どこまで俺を疑ってるんだ。あいつは三つ子の父親だろう。ちゃんと天界のお花畑だ」

私の隣に一緒のベッドで腰掛けているホセが言った。


日帰りでウィングが去ってから数日たった日の夜。

平和すぎるくらい平和な日常のワンシーン。

私がそろそろお風呂にでも入ろうかというところでホセがまめまめしくもカットされたフルーツを持って来たのだった。

ノックに、座るときの会釈、フルーツの飾り切りにも洗練された何かを感じる。


…天国のじゃなくて?

「おい、今のは傷ついた。通信機は全部お前に渡して電話もお前の前でしかしないのに…まだ信用されていないのか?」

それはやりすぎだって言ってるのに。

ホセは私に対してプライバシーを持つ気がさらさらないの?

「プライバシーとはすなわち秘密だろう?つまり後ろめたいことがあるんだ。そういう男はやめとけクラウン。何股かけてるか分からないぞ」

彼氏にこんなことを言われる女の子は一体何人いるんだろう。

「せっかく浮気をするなら見た目だけじゃなくて中身も選べ。誠実で人が良くて気前がいいやつを…」

うるさい!

何で彼氏に浮気相手のレクチャーをされなくちゃいけないの!?

「…クラウン、お前のことを思って言っているんだ。お前が変な男に泣かされるなんて許せない」

だからどうして浮気の進めみたいなことを…!

「束縛するのは忍びない」

…駄目だ、ホセって結構重度の馬鹿だ…

誠実なのに…すっごくいい人なのに…

「でだクラウン。誠実で人が良くて気前がよくてスッパリ関係が切れそうな奴を選べ。高学歴で頭の回転がよくて収入が多い奴が望ましい。将来性も考慮しろ。それにお前のことを弄ばなくて本気で好きなやつとかのほうが…」

そんな人がいたら浮気相手どころか付き合う!

んで結婚する!

と私が叫ぶとホセがサッと青ざめた。

もともと白い頬のわずかな血の気が全て失せ、両目がスッと見開かれている。


「え…?」

あ、まずい。

完全に地雷踏んじゃった。

「俺のこと…嫌い…だったのか…?」

震える声でそういって、ホセはポタ、と涙を流す。

「俺は…嫌だ、クラウン、俺は…」

私は慌ててホセをよしよし撫でるけど。

子供のようにガクガク震えるホセが痛ましくて、胸がギュッと締め付けられる。

アクアを失ったホセは、それこそ全てを私に注ぎ込むつもりみたいだった。

だから下手に別れるとか嫌いとか言っちゃうと動揺する。

ものすごく。

「嫌だ、嫌だ…一緒に居たい、居させて、俺を…俺を捨てるなよ…」

大丈夫だってば。

ただの冗談。

「冗談…?」

安心したようにホセは息を吐いて。

「…」

パッタリ倒れた。

つまり寝た。


…ホセってフェードアウトだいたい寝てるか気絶かどっちかだよね…

う~ん。

睡眠不足すぎる。