ペタン、と私のベッドにつぶれたまま動かないホセ。
ヘタッと垂れた尻尾と耳が見える気がした。
…可愛い。
普通に可愛い。
真っ赤な髪をちょっと撫で撫でしてみると、ホセは顔だけあげて、何も言わずにまたペトッと張り付く。
しょうがない、ホセの威厳が地に落ちてキャラが180度転換するかもしれないけどやってやる!
ホセ、覚悟しなさいっ!
私は、ホセの真っ白な首筋を、チョン、と触ってつう、と人差し指を動かした。
「ひゃぁぁぁぁ!!」
ホセは上っすべりした悲鳴をあげて首を庇った。
「何するんだ、俺が弱いの知ってるだろうが」
うる、と泣き出しそうな瞳で私を睨み付け、ホセはそのまま足を伸ばして座り込んだ。
と。
チャンス!
「ひっ!ひゃぁぁぁぁっ!あ、やめ、クラウ、苦し…だめだめだめやめてぇぇっ!」
時たま裏返る叫びに合わせ、私はホセをくすぐり続ける。
ウィングがガッチリ押さえているので、弱っているホセは抵抗できない。
やった!
いつものお返しだ!
「てめ、ウィンひやぁっ!殺してやる、このやろがぁっ!クラウ、もう、俺!死ぬ、本当に死ぬ!」
死ぬ死ぬ言うのでやめてあげると涙腺まで緩みきったホセは息もたえだえに、私に全体重を乗せてきた。
ウィングは戦慄して震えている。
ごめんね。
「何、するんだよ…死ぬかと…死ぬかと思った…絶対死んだと思った…」
ホセは首以外は全然大丈夫なのだけれど、もう首には触っただけで叫んで飛び退く。
可愛いとこもあるんだ!
「何が…可愛いとこ…だ…お前…っ!」
!
ホセはガブリと、私の首筋に噛みついた。
ごく、ごくと激しくホセの喉がなり、血の抜けていくふわふわした感覚に私は身を預けた。
「大人しくなったかよ、クラウン。この悪戯っ子が…」
仕上げだ、とホセは私にキスする。
血の味の赤い唇をペロリとなめて、ホセは不機嫌な顔で私を睨んだ。
「懲りただろ」
自信たっぷりにそういって、ホセはずん、と私に顔を近づける。
「嫌いになった…?」
ズルい。
ずるい。
今更、子犬みたいな顔しないで。
「クラウン…責任とれ」
俺をお前に、全部やるよ。
「お前の全てを、寄越せ」
お前は、俺の最後の人だ。
守ってやるよ、命にかけて。
そういって、ホセはまた、私にキスする。
よくも悪くもホセの綺麗な顔に見とれて、私は避けられなかった。
そのキスは、乾いた涙の味がした。