「ねぇ、どうしたの?」

必死に背伸びしている翔とそれを止めさせようと翔を引っ張る私に声をかけてきたのは



私と翔より背が高い、活発的そうな可愛い女の子だった。


「へっ?あ、あぁ。えっとね、クラス表が見えなくて……。」

「じゃあ、私が見てきてあげるよ。君ら名前は?」


ニカっと笑う彼女は、とても可愛らしかった。

「えっと、私は春風 飛鳥。こっちのが雛川 翔。」

「へぇ……。2人ともいい名前だね。じゃ、ちょっと待ってな。」


そう言って、彼女は人ごみの中に消えていった。

……え、何。

男前……。←←





すると、私の耳が小さな呟きを捉えた。


「……可愛い。」


そう呟いたのは、意外にも翔だった。

私は、何故か酷く戸惑った。



「め、珍しい…ね。翔が女の子にそんな事言うなんて……。」



何だろう、この感じ。


胸が、ゆっくり締め付けられる。


………苦しい…痛い……。



「そうか?…まぁ、女子の誰でも言うわけじゃないしな〜。」


そう言うと、翔は彼女が消えていった方向をじっと見つめている。







…“可愛い”なんて



私にも言われた事、無かったのに……。





どうしようもなく、泣きたくなった。