そんなこと、言えるはずもなく。 一人、音が聞こえなくなることを願うだけの日々。 10年前の8月のことだった。 「空。ちょっといいか」 「お父さん………?」 しばらくすると音が止まり、お父さんが部屋に入ってきた。 お父さんはダルそうで、目からも疲れが読み取れた。 「8月20日の空の誕生日に、北海道でも行こうか。家族旅行だ」