…………今、会いたい人がいる。

カバンに手を入れて、あるものを取り出して口に入れる。


「ねぇ、泣いてたら助けてくれるんでしょ?会いたいよ、南野!!」


チョコレート、なんだか塩の味がするな。

来てくれるわけ、ないのに。


「………………好き」

「俺も」


つぶやいた言葉に誰かの声が続く。

聞き間違えるはずがない。

この声は…………。


「お待たせ。なにアホ面してんの?」

「…………本物の南野?」


本当にくるとは思わなかったから本物か疑っちゃう。

すると「当たり前じゃん」って言って南野は笑った。


「だって、約束しただろ」


10年前と同じ笑みをして。