ビクッ
「このぐらいは選ばれたみんなができる」
藤先輩が桜木くんが去って行った方向を眺めた。
「桜木はね、鬼呼びが嫌いなんだよ」
「……どうして？」
「桜木が、鬼呼びとの間に生まれた鬼だからね」
そう言えば、強い子孫を残そうとするって。
生まれた鬼は最強の力を持ってるって。
「母親は、桜木を産んだ後に他の鬼に喰われてしまったからね。だから、桜木は母を殺した鬼も嫌いだし、鬼呼びの力で男を狂わす人間も嫌いなんだ」
鬼を呼ぶ人間も、鬼も嫌い…
「それが鬼呼びちゃんにも冷たい理由。桜木はこれからお楽しみに行くのさ」
「……お楽しみ？」
「今夜は荒れてるからな。７人ってとこだな」
「７人って？」
「女を抱いてその生気を吸いとってくるんだよ」
藤先輩が笑った。
いつだって人間は僕たちのエサになる。どんな時にもね。
藤先輩がわたしの腕を引いた―――
