おばあ様からもらった指輪、わたしの右手小指にあるのとは対の指輪だって。


『いつか、この指輪の意味がつばきにもわかる時が来るからね。その時まで』

無くさないように。


そう約束したのに。
それなのに無くしたかもしれないなんて。


「探さなくちゃ」


きっと教室に落ちてる。

手早く身支度を整えると一階に下りた。


「もう、いつまで支度に時間掛かってるの。柊くんを待たせたらダメよ」

「行ってきます」

「気をつけてね」


手を振ってわたしを送り出そうとしたお母さんが玄関を開けて目を丸くした。


「あら、この高級車」

「学校までの送迎車です」

「「えっ」」

「つばきさん、乗って」


運転手の白い手袋がドアを開けてわたしが乗り込むのを躊躇うと、大丈夫ですよと微笑んだ。

柊くんも隣に乗り込むとドアが閉められた。


「―――柊くん、お願いがあるの。昨日の話の続き聞かせて」