肩を捲ったら、
え?
噛みつかれたのに傷がない。
すごい歯で喰いつかれたのに傷がない。
跡形もない。
「つばき、リアルな夢でも見たんじゃないか?」
「お姉ちゃんったら寝惚けてんだね。クスクス」
「違うよ!ホントに鬼がいてね、噛みつかれたの!目が赤くてね。金色の瞳の鬼もいてね。榊先生も碧の瞳してて―――」
「もう、高校二年にもなって、ゲームばっかりしてるから夢と現実がわからなくなっちゃって」
はい、ご飯よ。
目の前に出されたのは炊きたてのご飯に味噌汁。
わたしの好きなベーコンに半熟卵。
夢だったのかな?
鬼のいる学校に転入したなんて。
そこで襲われたなんて。
箸を持たされて食べはじめると、いつもの食卓だし、お父さんもお母さんも普通にしてるし、妹もいつもと変わりない。
夢だったんだ。きっと。
朝食を食べてたら玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン