菊の口元が緩むのを見て、私も思わず緩む。



…だって、笑ってなきゃ負けな気がするから。




「私はあの悲劇が起きた理由が分からない。

けど、なんとなく察しがつく。


…沙羅はこの半世界を護ろうとしていたんでしょ」





「さあ…」





「そして沙羅は……確かに私のせいで大きな傷を負ってしまった。

けどあのあと確かに沙羅は、強い誇りを持ったかっこいい背中を私に見せて、どこかに行ったの」





忘れるわけない。


あの、かっこいい背中を。



私はずっとあの背中を追って、消えた今でも追っているんだから。




「…気がつけば、もう沙羅はいなかった。

けど…沙羅が最期に行った場所は、半世界」





「……へぇ」






「沙羅が命懸けで護ろうとしたのは紛れもなく、半世界の文明と存続。

半世界を壊そうとしたやつが…


10年前のあの時にも、いたんでしょ」






「椿はそう思うんですか?」





「…確信を持ってる」





私の唯一の理解者で、私の唯一の支えとなった沙羅が護ったこの世界を壊そうとするのが



…いくらなぜか惹かれる、菊だとしても。




「私は沙羅を護ろうとしたこの半世界を護ってみせるっつーの!



それがいくら悲劇でも…


半世界を護れなかった舞台の方が、悲劇に違いないから!!」