「やっぱり隼田くんも、岩島といっしょ?」

言った瞬間後悔した。
でも出てくる言葉は黒く染まっているものばかりで。
だんだんと心が黒くぐるぐるしてくのを感じた。


「やっぱり細い子がタイプ、だよねっ!こんな……デブ相手にしてるの恥ずかしいよ」

自分で言っといてグサリと刺さった。
それでも口を走らせる。


「別に無理してまであたしといなくていいんだよ。隼田くんに迷惑かけてると思うし。大体、あたしといても恥ずかしいでしょ?」

あたしだったら恥ずかしいもん。


ねぇ、こんなあたしといても恥ずかしいだけだよ。
周りの目、気にしちゃうよ。
隼田くんとちゃんと釣り合ってるかって不安に思っちゃうよ。

だから……っ。




「わか──」

「これ以上言うな!」


──っ!?

なんで遮るの?
なんでこうやって抱きしめるの?

逃がさないとでも主張しているような、力強い抱擁。
あたしはその中でじっとしている。


「別れるとか、有り得ないから。過去は過去だろ?」

芯の通ったハッキリとした口調で言った。


「もう過去に囚われるなよ。俺がいるじゃん。それに、自分で自分を傷付けるな」


耳元で聞こえる隼田くんの低い声。
それが優しくて、でも苦しんでいるような掠れた声。



『自分で自分を傷付けるな』

この言葉が脳に何度もこだましている。
あたしは何かしら傷付けてきた。
自分の心を。
自分にしか被害を与えないと思ってたから。
……でも、その考えは間違っていたみたい。



「木下が、苦しんでるのとかっていう顔俺何回か見てきた。傍で。でも、……苦しんでるのは俺も同じ、なんだよ」

「っ……!」

「俺だって苦しい。木下が苦しんでるから。もっと自分を大事にしろよ。1人じゃないだろ?俺たちがいるじゃん」

「っ……はやた……くっ」

勝手に流れてきた涙が、止まらない。
隼田くんの言葉は心に突き刺さっていたいくつものトゲを溶かすようで真っ直ぐだった。