佐木くんを優しいと思ってから早3日。
今は塾の帰り道。
もうそろそろ夏だし、まだ明るいなぁ~

あれから佐木くんを見る目がかわったんだ。「相談相手」ってちゃんと思えるようになった。
それから、最近、気になってることがあって…
【そのかわりに俺の相談にものること】
交換条件のときにいってたこと。
佐木くんの相談…
結局、聞いてないんだよね~
なんなだろぉ…

「織音。」

いきなりでビックリした。

嘘だと思った。
夢かと思った。
あまい、優しい声で私の名前を呼ぶその声は…

「慧くん…」

くるっとした目。
157センチの私よりも身長はひくいんだけど、小柄ですらっとしたスタイル。
顔を傾けてニコッとわらい手をふって走ってきた。
ずるいな…。
なんで、手なんかふるの?
好きでもない私になんかに…

「久しぶりだな。元気してたか?」
「え。あ。うん!!慧くんは?」
「そっかー。よかった。俺は元気だぜ!!どうした?顔赤いぞ?今日、あついもんなー」
それは、慧くんが好きだからです。
もう、どきどきがとまらないからです。
「そうだ…ね!?」
がたごとで返す私。
「それより、慧くん、お買い物?」
慧くんのビニール袋を指指さしてわたしはいった。
「あぁ…」

「慧~先行きすぎだよー!レジならんでたのわかったでしょ!?」

慧くんが答えるまもなく遠くから走ってだんだん近づいてくるその声は、
聞いたことのある声だった。
この状況では、聞きたくない声だった。


「すずちゃん…。どぉ…して。」

「うん。なんつーの?デート?///」
頭をかきながら照れて笑う慧くんはとても、幸せそうだった。

そっか。そうだよね。
付き合ってるんだもん。
デートなんて、あたりまえじゃん。…

わたしは、がんばって笑った。
悲しいのに、ほんとは泣きたいのに、その気持ちを抑えて…我慢して…笑った。
「あー!そっか!そうだよね!邪魔してごめん!じゃぁ、わたしいくね!」
「織音っ~!」
「織音ちゃん!?」
私の名前を呼ぶ二人の声を背中に、私は必死で歩いた。