今あった信じたくもない事実に、必死に背中をむけ、歩いた。

「……ッ。なん、で…」
気づけば私の顔は涙でいっぱいだった。
手でこすっては涙がこぼれ落ち、もう、道なんてわからない。
夜で人気が少ないから、余計に思っいきり泣けた。

「織音…ちゃん?」
ぐすっと顔を上げるとそこには驚いた顔をした佐木くんがいた。
あぁ、見られちゃった。
「佐木…くん。なんで…?」
「織音ちゃんこそ。それに、なんで泣いてるの。慧のこと?」
「慧くんのこと以外になにがあるんですか(笑)でも、ほんと大丈夫なんで。じゃあ、私、いき…」
「まって」
佐木くんの横を通り抜けようとした私の手は、佐木くんにとめられた。
力が入っていて、少し痛かった。
いつも可愛い顔してる佐木くんも、男の子なんだなって思った。
「俺今、すっげーおこってる」
「えぇ!?」
思いがけない言葉だっあので、私は、驚いた。
なんで?って言う間もなく、佐木くんが喋る。

「なんで、おもってること言ってくれないの?『相談相手』なんだよ?俺、そんな信用できないかな。」
…。

「嫌だ…。慧くんが、付き合ってるなんてほんとは嫌だ。デートだってわかんなくて、浮かれた自分もいやだし。慧くんがすずちゃんといるとこなんて、見たくなかった!!嬉しくもないのに、笑ったりして。ほんとは、…ッッ。ほんとは悲しくて、悔しくて、たまんないのに……ッッ!」

涙があふれるのと同時にためこんでいたものがいっきになくなっていくのは、自分でもわかった。

「やっと、話してくれたね。」
佐木くんは私の頭をポンポンと優しくなでた。
その、大きくて温かい手は、ほんとに優しくて、なんだか、ドキッとした。