知恵は、携帯で大輔に連絡したが、留守番サービスに変わるだけだった。

なにげなく薄型の大型液晶テレビを見ると、ニュースのスポーツコーナーが放送されていた。

レットソックス松坂がヤンキース戦で、1対0で完封勝利と報じていた。

再び、知恵は携帯を手にして、大輔にメールを送った。

内容は、『大ちゃんの好きな黒霧島と好物の料理を用意しているから、早く帰ってきて』と、いう内容でハートマークを添えた。

メールを送信した後、テレビのキャスターがニュースを読んでいた。

内容は、大輔が勤めている会社からリーコル車が出た内容だった。

会社の責任者が、記者会見で謝罪している姿が映っていた。

それを見た瞬間、知恵は直感した。

大輔は、今日一日中、会社の不祥事のため慌しくしていたことが想像できた。

普段なら携帯で電話しても、すぐにメールで返事をくれる大輔が、今日に限って返事がなかったのは、それが原因だと思った。

どうして、今日に限って、と思うと、やりきれない気持ちになった。

子供ができたことに、大輔の喜ぶ表情を想像しながら、待っていた知恵だったが、今夜はそれも期待できないと思い、ひとり食事をした。