テンポラリー・ジョブ

知恵は、昼の休憩時間に真美と一緒に食事をした。

会社近くにある洋食屋に二人は入った。

客が十人も入れば、いっぱいになる小さな店であるが、そこの主人が作るオムライスは、おいしいと評判のため、昼時になると客で混雑する。

客であふれている中を、二人はカウンターに座ってオムライスを頼んだ。

「それで、話せなかったの？」
真美が一口、オムライスを口にして言った。

「そうなの・・・」
知恵が答えた。

「ねぇ、知恵、今夜はちゃんと話すのよ」
「うん・・・わかっているけど・・・」
知恵は、返事に困った様子だった。

「どうしたの？」
真美が心配して尋ねた。

「大ちゃん、今夜も遅くなるって、さっき、メールで連絡があったの」
「そうなの・・・」

「大ちゃんの会社、今　大変みたいなの」
「知っているわよ。リーコル車のことでしょう。今朝のニュース見たわよ」

「大ちゃん、そのリーコル車のエンジン部門の責任者のひとりなの」
「じゃ、大変じゃない！」
真美は、食べるのをやめて言った。