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「ほら」



私は影山修二のその声に目を覆っていたハンカチを目から離した。


影山修二の手には私の大好きな紙パックのフルーツオレがあった。


私が好きなのは意図してか、はたまた偶然なのかは分からないが。



「やるよ」


「……ありがとう」



そう礼を言い、フルーツオレを受け取った私はストローで穴をあけ、それに口をつける。


冷たい液体が喉を通っていき、それと共に動揺していた心がスーッと少しずつ冷静さを取り戻していったような気がする。


しかし、それと同時にこれは夢ではなく現実なんだということも思い知らされた気がした。



「少しは落ち着いたかよ」



そういいながら私の座っている階段の横に腰を下ろし影山修二。



「……うん」



それから影山修二は私の間には無言の時が流れた。


私のことなんてほっといてもどっか行けばいいのに……


言葉は発さないけれど、私の隣から離れない。


変なところで優しいヤツ。



「……なんかね」



私は涙がこれ以上こぼれないように空を仰ぎながら言葉を漏らした。



「信じる者は救われるとか言うじゃん?
だからいつかはこの想いを受け止めてくれるんじゃないかって。そう思って、信じてた。

でもどんなに頑張ったって、あがいたって、どうにもならないことだってあるんだよね。


私、本当にバカなのかも」