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私と藤くんはみんなが集まっている場所へ向かって歩いていた。


様々な露店が左右に並ぶ道路。


その間をあらゆる人が行き交いしている。


それでも。


すれ違う人から感じる視線は勘違いではないだろう。


私は私のすぐ横を歩く彼を確認する。


藤くんの浴衣姿はそれほど妖艶で、どこかの雑誌から飛び出てきたようだった。


しかし、藤くんはその視線に全く気付いていない様子だった。



「あっ!」



私はふと、とある露店の前で立ち止まった。



「藤くん、ちょっと買ってきたいものがあるんだけど行ってきていい?」


「あ?……いいけど、時間ねぇんだから早くしろよ」



そう。


すっかり目的を見失っていたが、今回、このために来たと言っても過言ではない。