大きなかたまりが、どどどっと近づいてきて、ごす、と鈍い音がして、急にわたしの身体が軽くなる。


見ると、床にうずくまって呻いている斉木くんの姿。


「お前ここどこだか分かってんの?普通に捕まるよ、訴えられて勝ち目ないよ、バカなの?」


冷ややかに言いながら、斉木くんを見下ろす後ろ姿。


……こんな爽やかにざっくりした白いコットンシャツを着こなす人、うちの会社にいたっけ?


すらっと長い足も、スーツじゃなくてちょっと珍しい色に染め上げられたラフなパンツで。


無造作な感じの髪の毛も、何だかすごく素敵。


わたしに背を向けて、床に転がる斉木くんと対峙しているその背中は、何だかとても頼もしくて……。


やばい。


何このシチュエーション。


いたじゃん、王子様。


わたしがその背中を見つめるうちに、斉木くんが慌てて立ち上がって。


「……さーせんでした」