「那奈さん、好きです」


右手でわたしのシャツをたくしあげようとするのと、左手で腕を押さえつけるのと、腰の辺りに馬乗りになって足で押さえ込むのと。

その、乱暴で横柄な振舞いからは信じられないくらい、その声が切なく響く。



なに、優しい声出してんの?

あんた、自分がなにやってるか、分かってる?

て言うか、何言ってるの。


今朝、聞いてからずっとずっとわたしの中で燻っていた言葉を、口にする。



「……ババアの出し惜しみ、むかつくよね」


す、と斉木くんの動きが止まる。


強く強く押さえつけていた重みが軽くなり、斉木くんの、暗く光る目に、わたしが写るのが見えた。


「え……」


今だ、と身体の向きを変えて、斉木くんに組み敷かれた状態から這い出そうとしたとき、


「おい何やってんだコラー!!!!」


遠いのか近いのか、よくわからないけれど、大きな声が廊下に響く。