いや、そうじゃなくて……全然そういうことじゃなくて……。


「な……んで……」


分かっているくせに、わたしの口をついて出る言葉は、何故か疑問形。


そして、脳裏を駆け巡る、斉木くんの言葉。


『ババアのくせに出し惜しみ』

『うまくいったら、コーヒー奢れよ』


……だめだ、涙が出そう。


恐怖から、まばたきを忘れたわたしの眼に涙がたまる。


ベンチが置かれて、多少奥まってはいるものの、ここは立派にオフィス内。


すぐそこの廊下を人が通れば、何をしているか一目瞭然。


ていうか嘘でしょ、こんなとこでヤられるとか、あり得ないから。


なんで?


枯れたババアを落とせれば、その勇気を褒め称えられてコーヒー奢ってもらえるの?

頭、おかしいって。