ユウの話を聞く限り、HARUの態度は明らかに友人に対するものではなかった。
思わせぶりな口説き文句。既婚者であることを故意に隠したとしか思えない。
だいたい、キスをしてきた時点でそこにあるのは完全なる浮気心だ。
そんな泥沼にユウを引きずり込んだHARUが許せなかった。

「何考えているんだろう、HARUさん……」
呟いた景斗の声は不満丸出しで
「ほんとうに……何考えてるんだろうね」
思わずユウまで苦笑いを浮かべる。


HARUはみんなの兄貴分で、誰にでも優しくて頼もしくて。
絵に書いたような真っ直ぐな人だった。
なのに。

今思えば、ユウの職場に初めて二人で行った時、何食わぬ顔で嘘をついていたなぁなんて、今さらながらに思い当たって。
ひょっとしてHARUの本性は、平然と嘘を並べるいい加減なやつなんじゃないかとか、そんなことが頭をよぎって、景斗は拳を握りしめた。
信じていた分だけ、ショックは大きかった。
それはユウも同じだろう。

景斗がユウから逃げ続けてきた数日間、ユウはひとりでずっと思い悩んでいたのだろう。
本当に自分は肝心なときに役に立たないヤツだと、呆れるしかなかった。

「ひょっとして、しばらくゲームに来なかったのはそのせい?」
景斗が聞くと、ユウは小さく頷いて、景斗に背を向けた。

「ごめんね、ちょっと、いろいろ整理できなくて」
顔を見せぬまま、ユウは呟いた。肩にかけたバッグを彼女はギュッと握りなおす。
「でも、本当にもう大丈夫だから」
そう言ってユウは玄関のドアに手をかけた。
「景斗は自分のことだけ考えててよ」