う……

景斗がちらりとユウを覗き込むと、彼女は黙ったまま次の言葉を待っているようだ。

口が『違う』と言いかけたけれど、罪悪感が言い留まらせた。
それはユウにも、綾にも失礼だ。
何より、酷く自分が不誠実に思えた。
そもそも嘘をつく必要なんてあるのだろうか。
もうユウのことは諦めるしかない訳だし、ここで独り身をアピールして一体何になるっていうんだ。

「そうだよ」
景斗は頷いた。
2人の顔を見ないまま、携帯の中身をチェックして、簡単な返事を打つ。
送信ボタンを押したあと、携帯をテーブルに伏せた。

「なーんだ、景斗彼女いたんだ」
イリーナがわざとらしい声を上げた。
「……心配して損しちゃった」
胡坐をかきながら、ぽそりと呟く。

「……」
ユウは何も答えず、再びテーブルの上の課題に視線を落とした。


彼女は何を考えているのだろう?
呆れただろうか。つい数日前に告白してきた男が、さっさと別の女に乗り換えていただなんて。
普通はきっと軽蔑する。
彼女の次の言葉が怖かった。

「……」
居心地の悪い静けさが場を包む。