「………。」







口を引き結びながらも、何か言いたそうに唇が微かに動いた。




綺麗な黒い瞳が切なげに揺れる。





それでも結局、何も言葉にすることがないまま、お互いに重すぎる沈黙が横たわる。





先に体を逸らしたのは函南君で。



風を切るようにして、清花の横をすり抜けていった。




痛ましすぎて…胸が苦しい。



清花は俯いて涙をこらえた。





「……………ごめんね。」







無責任な事、言ってごめん。





君を傷つけてごめん。










でも…





理解して欲しくないなんて、


そんな人が本当にいるの?










私が嫌いだなんて、嘘だ。




だって、


もし本当に嫌いなら…、



清花の視線の先……
函南君の持つ、カバンのポケットの辺りがきらりと青っぽい光を反射した。





……私が誕生日プレゼントにあげたキーホルダー、ずっとカバンにつけてくれるはずない。





ねぇ…私は君が僅かでも私とのつながりを残してくれているのなら、




私は諦めない。








余計なおせっかいだ…と自分を嘲笑いたくなる。





函南君に嫌われてしまった今、悲しすぎて消えてしまいたい。






唇をぐっと強く噛む。熱くなる目頭も、胸からこみ上げてくる何かも、呼吸をも止めて全てこらえた。







だけど私が知っていること、函南君が知らないでいいはずがないから。




それを君に届けることができるまで。私は…。













64日目ーーー。





私は君を傷つけた。