君がどうしても、前に踏み出せないのなら
「苦しい時は、嫌だって言ってみればいい。
どんなに否定されても、函南君だということに変わらないよ。」
教えてあげたい。
暗い洞穴みたいな心の中に閉じこもっていないで。
翼があるのを知らないだけで、函南君はもっと飛べるはず。
知って欲しい。
君がどれだけ素敵な人なのか。
どんな手段を使っても。
「辛い時は、泣いていいんだよ。
恥ずかしい事じゃないんだから。
無理に自分を好きになれなくてもいいと思う。
だけど私は函南君が大好きよ。
大丈夫だよ。
函南君は、必ず幸せになれるから。」
前髪が風でよけられて。
その影から涼やかな瞳が現れた。
呆然とした表情がその下から現れる。
ポーカーフェイスは完全に崩されてしまって。
口を僅かに開けて。
みるみる、切れ長の瞳から透明な涙が滲んで…
それでも、こぼれ落ちる瞬間、それを隠すように、顔を背けた。
どこまでも強がりな君は、
いつだって弱音は見せないね。