「函南君は、それでいいの?」
「…………なにが。」
清花は少し躊躇いながらも、続きの言葉を口にする。
「周りの様子を見て、自分のやりたい事とか、諦めてそれでいいの?」
「…………仕方ないんだよ。」
「仕方ないの?
じゃあ函南君は、会社のために死ねって言われても、仕方ないなら死ぬの?」
「そんな極端な話してねぇ。」
函南君の少しいらついたような声。
その声にびくつきながらも、清花はなぜか、引こうとは思わなかった。
「極端…そうかもね。
普通にしてたら死ぬか生きるかなんて、考えないよね。
私は前にね、踊りと健康どちらをとるか選択を迫られたことがあって…、ダンスをとったの。それで…、
一度、危篤になった事があるの。」
「…!?」
清花の最後の一言を耳にして、函南君はわずかに目を見開いた。
これは、野風にもまりあにも言っていないこと。
ダンス発表会で倒れて、入院して一週間目に、血圧が急に低下して生死をさまよったのだ。