そこのセーラー服は知っている。
野風の姉の、いぶちゃんが通っていた、女子高だった。
全国でも名高い、お嬢様高校。
綺麗な女の子だった。
落ち着いた紺色の制服が、都会の雑踏の中にいても、隠しきれない品の良さをさらに引き立てている。
さらさらの髪の毛が緩やかに揺れていて。
清花も思わず、見惚れてしまった。
函南君は相変わずポーカーフェイスを崩していないけれど、彼女の函南君を見る目は嬉しそうで…。
二人がただの知り合い以上の中であることが伺えた。
清花はぼんやり、ふたりを眺めていると、女の子の方が函南君にお辞儀をした後、両手で鞄を持つと路肩に止まった黒い車に乗って、その場を去っていった。
無意識に見ていたことに気がつき、清花は我に返って駅に向かって歩み出した。
『金持ちだから。』
いつか言っていた函南君の言葉が、ふと耳の奥に蘇った。
前髪で綺麗な目を隠してしまった函南君。
その声は、言葉は。
まるで、自分の境遇を嘆いているように清花の耳に、心に響いてきたんだ。
「芦屋…。」