同じ年とは思えないほど、大人っぽくて、憂いをおびた函南君の表情。
なんて声をかけていいかわからないけど、その表情を少しでも変えたくて、必死に答えを探してみる。
「函南君にとって、弓道がすごく大事なら、抵抗するのもありなんじゃない?」
言ってから、無神経だったかなと少し心配になったけれど、函南君は苦笑いを浮かべただけだった。
「弓道は好きだよ。
本当はずっと続けていきたいけど、
俺は、
弓道の為にそこまでする勇気はないね。」
函南君はふっと軽く吐息を漏らして、宙を見上げた。
「そっかあ…。じゃあ、これからすごく大事なものが、見つけられるといいね!」
底抜けに明るい声の清花に、函南君は少し気が抜けたように、表情を柔らかくした。
「いや、いいよ。別に。面倒だからそういうのあると。」
「面倒だけど、人生楽しくなると思うけどなぁ…。」
「その、ポジティブシンキング、羨ましくて涙が出るね。」
はっと函南君が呆れたように、でもどこかおかしそうに笑った。
こんなにしゃべって、いろいろな表情の函南君を見るのは初めて。
君と話す度、何かしらの初めてを発見したり、ドキドキをもらったりするの。
だからほら、今日も生きていて楽しい。
一見、短調で、モノクロにみえる毎日の中でも、胸をときめかせるような、彩どられた幸せが隠れてると思うの。
君にもたくさん、見つけてもらえたらいいな。