清花の練習していた場所は地下で、そこの通路は地上とつながっており、駅の西と東を結ぶ地下道になっていたのだ。





駅の西口の方には、武道館があり、おそらく函南君はそこからの帰りだったに違いない。






墨を流したような、真っ黒で艶やかな髪。



その隙間から覗く、涼やかな瞳。



同じ位の年だろうけど、あまりに物静かなその出で立ちに、なぜか心を動かされた。









ドアを開けて、清花がどうしたの?




と聞くと、









「ダンスすごいから…思わず見てた。





感動した。って言ってくれた。








その言葉が、何より嬉しかった。


私は体の不調も忘れて、嬉しくてたまらなかったの。








でもそれと同時に、先生に言われたことが思い出されて、また悲しくなって不安にもなって。



見ず知らずの函南君に愚痴っちゃったんだよね。」





あはっと力なく清花は笑った。