ステップを踏む度に、痛む足。
ヴェールをひるがえす度に荒くなる息。
わかってる。自分でも無謀なことしてるって。
でも…!
こんなに、一生懸命やってるのに。
馬鹿かもしれないけど、命懸けで踊ってる。
だって、こんな風に踊れるのは、普通の人は普通のことかもしれないけど、私にとっては奇跡に近いことなんだよ。
だから、見て欲しい。
応援、してほしい。
それなのに、私に頑張れっていう人はいないんだな…。
こんなに、苦しんで、それでも踊っているのに。
どうして、私を見てくれないの。
私の価値ってそんなもの…?
「なんか、ひとりで頑張っている自分が虚しく思えてきて、いよいよ体が辛くなって…体を動かすのを止めてしまった。
その時ーー。
函南君と会ったの。」
練習室を覗く、一人の少年。
学ラン姿で長い棒を持っていた。
今となってはそれが弓だってわかった。
今より、幾分幼い顔。
でも、黒髪い前髪から覗く涼やかな瞳は今と何一つ変わっていない。