幼い時から、体を崩しがちだった清花を心配し、最初こそ母は反対したが、
こうと決めたらてこでも動かない清花に負けて、条件付きでダンスを認めたのだった。
…それらの懐かしい日々が、まるで走馬灯のように脳裏に蘇ってきた。
想い出を宝物のようにそっと胸に抱きながら、彼女は話し始めた。
「病気がちで、日常を制限されてしまった私にとって…、
ダンスをすることは、生きがいで…。
外で、友達との鬼ごっこも、缶蹴りも、ドロケイも…。
やりたいこと、ぜんぶ、諦めてきたけど、
ダンスは…ダンスだけは、
どうしても諦めたくなかったの。」
ダンスをする時だけ、ありのままの姿でいられる気がした。
そのひとときが、自分が確かに生きているんだって感じられる時でもあった。
手放すなんて、出来なかった。
清花は、ゆっくりと函南君にはなして聞かせた。
いったん、口を閉じてふっと息を吐きた。